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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)9597号 判決 1986年1月30日

原告

近鉄運輸株式会社

被告

庚申トラフィック有限会社

主文

被告らは各自、原告に対し、金五七二万二、二六三円およびこれに対する昭和五八年一〇月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の負担とし、その九を被告らの負担とする。

この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告らは各自、原告に対し、金六四〇万八、二四八円およびこれに対する昭和五八年一〇月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

(一)  本件事故の発生

1 事故発生日時 昭和五八年一〇月一三日午後一一時一九分頃

2 同場所 滋賀県甲賀郡石部地先 名神高速道路上り線四五五キロポスト付近

3 加害車両 被告庚申トラフイツク有限会社(以下、被告会社という)運転手被告大森正春運転の大型貨物自動車(愛媛八八か一一七二)

4 被告車両 原告運転手訴外佐々木省二運転の原告所有大型貨物自動車(トラクター大阪一一う一五七八・トレーラー名古屋一一け三六七三)

5 事故の態様

右訴外佐々木が右日時に被害車両を運転して右現場道路の走行車線を進行中、追越車線を時速九〇キロメートル以上の速度で走行して被害車両を追い越した加害車両が、そのままの速度で被害車両の進路前方の走行車線へ車線変更をしたところ、右道路がカーブになつていたうえ雨が降り続き路面も濡れていたのに、重量制限をはるかにオーバーする荷を積んでしかも右のごとき制限速度(時速八〇キロメートル)をはるかにオーバーする猛スピードで走行を続けたため運転操作を円滑に行うことができず、被害車両の進路前方の道路上に走行・追越両車線を塞ぐ形で横転し、その積荷のドラム缶数十本がその場に転がり出した。そこで、右訴外佐々木は、右横転加害車両および道路上に散乱したドラム缶との衝突を避けるべくブレーキ操作をしつつハンドルを左に転把したところ、道路のガードレールに衝突してしまつたものである。

(二)  損害

前項の事故(以下、本件事故という)によつて、原告は、次のとおりの損害を蒙つた。

1 被害車両の修理費用 金二七三万三、〇〇〇円

2 被害車両の引き上げおよび牽引費用 金四一万六、七〇〇円

3 道路復旧工事負担金 金八五万五、二五八円

被害車両がガードレールに衝突したことによつて損傷した道路の復旧工事費用について、日本道路公団に支払つた負担金。

4 油除去費用 金三万八、〇〇〇円

被害車両がガードレールに衝突したため、道路に隣接する土地に同車両の油が流出したため、これを除去するのに要した費用。

5 休車損害 金一七八万五、二九〇円

原告は、トラツク運送を業とする会社で、被害車両も運送用に使用されていたものであるところ、本件事故による損傷のためこれを運行の用に供せられなかつたことによる休車損害。

(1) 昭和五八年七月分から同年九月分まで(本件事故前三か月間)の被害車両の運賃実績 金一、四二二万〇、四九七円(九二日間)

(2) 利益率 三五パーセント

(3) 休車日数 三三日

右(1)、(2)、(3)を順に乗じて算出した休車損。

以上、合計金五八二万八、二四八円

(三)  責任

1 本件事故は、前述のごとく事故現場付近の道路がカーブでしかも雨のため路面が濡れて滑りやすくなつているのであるから、被告大森としては、道路の状況・自車の状況等に十分配慮し、他に危害を及ぼさないような速度と方法で運転操作をしなければならないのに、これを怠り、制限重量オーバーの積荷の大型貨物自動車で制限速度オーバーの猛スピードのまま走行を続けた過失によつて、道路を全面的に塞ぐ形に横転し、その積荷のドラム缶を散乱させたために発生したもので、これによつて原告は前項の損害を蒙つたものである。従つて、被告大森は、原告に対し、民法第七〇九条に基づき右損害を賠償すべき責任がある。

2 被告大森は、本件事故当時被告会社の従業員であり、事故時の加害車両の運行は被告会社の「事業ノ執行ニ付キ」なされたものである。従つて、被告会社も民法七一五条に基づき被告大森とともに本件事故によつて原告の蒙つた前項の損害を賠償すべき責任がある。

(四)  弁護士費用

ところが、被告両名が任意に右損害金の支払いをしようとしないため、原告は、本件訴訟を提起せざるを得なくなり、原告訴訟代理人にこれを委任したのであるが、このため原告が負担すべき弁護士費用のうち少なくとも金五八万円は本件事故と相当因果関係のある損害である。

(五)  結論

よつて、原告は、被告両名に対し、各自本件事故によつて原告の蒙つた損害合計金六四〇万八、二四八円およびこれに対する本件事故発生日である昭和五八年一〇月一三日以降支払済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

(一)の1ないし4の事実は認めるが、同5は不知。

(二)は不知。

(三)の2のうち、被告大森は本件事故当時被告会社の従業員であり、被告会社の事業の執行中に本件事故が発生したことは認め、その余の(三)の事実は不知。

(四)は不知。

なお、

1 原告は本件事故による休車日数三三日間の休車損害として金一七八万五、二九〇円を請求している。

しかし、原告の昭和五八年度の年間運送実績報告書によれば、路線トラツクの実働率は八五・九%にすぎず、事故当時約一五%の遊休車両が発生していた。従つて、原告は、一五%の遊休車両を適切運用しておれば、本件事故によつて被害車両の休車中も従来通りの営業収入を得ていたものであり、何らの休車損害も発生していない。

2(1) 仮に右の点において、原告に休車損害があつたとしても、原告の昭和五八年度の年間運送実績報告書によれば、路線トラツクの実働率の営業収入は一日当たり金一二万九、六二五円であり三三日間の運送収入は金四二七万七、六二五円にすぎないのである。のみならず、右は実働車両の営業収入であるから、原告の路線トラツクの実働率八五・九%を乗じた金三六六万三、四七九円が三三日間の実際の一車当たりの営業収入であつた。

(2) 原告が、休車損害について利益率を三五%とするのも極めて高率である。

原告が右利益率を算出する基礎資料によつて算出する一一トントラツクの一日当たりの休業損害は六、三〇〇円にすぎない。むしろ、運輸省自動車局編「自動車運転事業経営指標」昭和五〇年度版によれば、原告と同様の一〇一~三〇〇台の事業規模の路線トラツクの荒利益率は一七%とされているのであり、本件においても利益率はせいぜい一七%弱度が適当である。

三  抗弁

(一)  免責

本件事故は、加害車両が被害車両に衝突したものではなく、被害車両の単独事故である。

(二)  過失相殺

仮に、加害車両の横転事故と被害車両の損害とに相当因果関係があるとしても、被害車両と加害車両との間には九〇メートル程度の車間距離があり、両車両が同スピードで走行していたところ、被害車両運転手訴外大森正春は加害車両の異状に気づき三〇秒間運転を続けていることから、車間距離を十分にとり、被害車両運転手大森が充分前方を注視して、加害車両の異状に気づくとともに適切に操作していれば本件事故は避けえたものであり、本件事故について被害者側の過失は極めて大きいものであるから、過失相殺がなされるべきである。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実はいずれも否認する。

第三証拠

記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり。

理由

第一事故の発生

請求原因(一)の1ないし4の事実は、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第三ないし第一一号証、証人佐々木省二の証言、被告大森本人尋問の結果によれば、同(一)の5の事実が認められる。

第二責任原因

一  被告大森の責任(不法行為責任)

成立に争いのない甲第三ないし第一一号証、証人佐々木省二の証言、被告大森本人尋問の結果を総合すると、被告大森は、加害車両(大型貨物自動車・最大積載量八、二五〇キログラム)を運転して千葉へ向け名神高速道路上り線四五五キロポスト付近の追越車線を時速約九三ないし九五キロメートルの速度で走行中、訴外佐々木が運転し、時速約九〇キロメートルの速度で走行車線を走行していた被害車両(大型トレーラー車)を追い越し、更に、走行車線へ進路変更しようとしたが、同所は下り坂で左カーブしており、当時、降雨のため路面がぬれていて車輪が滑走しやすい危険な状態で、かつ、加害車両には荷台前部にダンボール箱入り缶ジユース(一箱に三〇缶が入れられたダンボール一五〇箱約八七七・五キログラムと一箱に一二缶が入れられたダンボール一八〇箱約三、〇二四キログラム)及び荷台後部にドラム缶入り冷凍果実飲料濃縮果汁(三六缶約七、九二〇キログラム)を積載していたから加害車両のハンドルをとられやすい運行状況にあつたのであるから、追越車線から走行車線へ進路変更するにあたつては、減速し、加害車両の車輪が滑走しないように運転操作を適切にしなければならない注意義務があるのに、これを怠り、時速約九三ないし九五キロメートルの速度のまま急激に左へ転把してフツトブレーキを使用し、続いて、加害車両の進行する角度が左斜めにきつく感じて右ハンドルを切つて急制動し、続いて左右にゆれるという運転操作上の過失により、加害車両を滑走させて道路左側のガードレール支柱に衝突させ、更に追越車線上に助手席を下にして横転させて高速道路を塞ぎ、よつて、これとの衝突を避けようとした後続被害車両をして左側ガードレールの支柱とロープに衝突させたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

右によれば、本件事故は、被告大森の運転操作不適の過失により加害車両を高速道路上に横転させ、高速道路における後続車の走行をさまたげるために、これとの衝突を避けようとした被害車両の所有者である原告に損失を与えたというのであるから、被告大森は、民法七〇九条により、本件事故による原告の損害を賠償すべき責任がある。

二  被告会社の責任(使用者責任)

被告大森は本件事故当時被告会社の従業員であり、被告会社の事業の執行中に本件事故が発生したことは、当事者間に争いがなく、かつ、被告大森の運転操作不適の過失により本件事故が発生したことは前記認定のとおりであるから、被告会社は、民法七一五条により、本件事故による原告の損害を賠償すべき責任がある。

一 被害車両の修理費用

成立に争いのない甲第一二号証の一ないし三、第一三号証の一、二、第一四号証の一、二によれば、本件事故による被害車両の修理費として合計金二七三万三、〇〇〇円を要したことが認められる。

二 被害車両の引き上げおよび牽引費用

成立に争いのない甲第一五号証の一、二によれば、本件事故から被害車両を引き掲げ、けん引する等の費用として四一万六、七〇〇円を要したことが認められる。

三  道路復旧工事負担金

成立に争いのない甲第一六号証の一、二によれば、被害車両がガードレールに衝突したことによつて損傷した支柱、立入防止さくなどの復旧工事のため八五万五、二五八円を負担したことが認められる。

四  油除去費用

成立に争いのない甲第一七号証の一、二、証人元山好哉の証言によれば、被害車両が左側ガードレールに衝突し、被害車両の油が道路に隣接する土地に流出し、これを除去するために三万八、〇〇〇円を負担したことが認められる。

五  休車損害

成立に争いのない甲第一二号証の二、三、第一三号証の二、第一四号証の二、第一八号証の一ないし四、第一九号証、乙第二、第三号証、証人元山好哉の証言を総合すると、原告は、本件事故により生じた被害車両の損傷部位につき大阪日野自動車(株)などに修理を依頼し、昭和五八年一一月二三日に至つて同社から納車されたが、その間、休日祭日を除く被害車両の営業可能日数は三三日であつたこと、原告は五か所の営業所に合計一八四両の認可車両を持ち、被害車両の属する東大阪支店には昭和五八年度で一般路線貨物自動車運送事業及び一般区域貨物自動車運送事業の各認可を得た車両が配属され(合計五九両)、合計五九両のうち一般路線貨物自動車運送事業用車両は被害車両も含めて三八両であつたこと、原告会社の昭和五八年度輸送実績をみると、最大積載量三・五屯を超える事業用自動車の実働率は八〇・一%、輸送距離別輸送回数は被害車両のように長距離(五〇〇キロメートルを超えるもの)輸送回数が総合計回数二万三、六一五回のうち四、三九二回、実働車一日一車当たりの走行キロは二二六・九キロメートル、輸送トン数で四・八四屯、営業収入が三万五、三七三円、運行車と集配車別の運行車輸送実績をみると、その実働率は八五・九パーセント、実働車一日一車当たりの走行キロは二一九キロメートル、輸送トン数九・七屯、営業収入一二万九、六二五円であつたこと、原告会社の東大阪支店に配属されている被害車両の昭和五八年七月から九月までの事故前三か月間の輸送実績をみると、営業収入は合計一、四二二万〇、四九七円(これを九二日で割つた一日一車当たりの営業収入は一五万四、五七〇円・円未満切捨て。)、輸送トン数合計一、〇〇二・七一五屯(これを九二日で割つた一日一車当りの輸送トン数は一〇・八九九屯)であつたこと、保険毎日新聞社発行のノンマリン査定ガイド<自動車保険編>によれば、一般路線営業用貨物車一一屯の経費率は、六五・九四%であることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

ところで、被害車両の休車損害を考えるにあたり、原告会社に、統計上、実働していない車両があるからといつて、原告にこれを適切に運用して営業収入を得なければならない義務が存しないことは当然であるうえ、原告会社において本件事故当時ごろに遊休車が現に存在したとする証拠もなく、仮に、遊休車が存在するとしても、これを運用していたことの認められない本件では、被害車両の修理期間中、被害車両を運行の用に供することによつて得たであろう逸失利益は、被告らにおいて、これを賠償しなければならないものというべきである。

そこで、前記認定事実をもとに被害車両の休車損害を考えるに、原告会社は一般区域貨物自動車運送事業のみならず、一般路線貨物自動車運送事業をも営む会社であつて、認可車両数で一八四両の車両を保有し、五か所の営業所を持つ会社であるため、原告会社の一年間の営業実績の平均をもとに被害車両の休車損害を考えたことは、蓋然性の点で、適切でなく(例えば、一日一車当たりの運行実働車営業収入は平均一二万九、六二五円であるのに対し、被害車両のそれは平均一五万四、五七〇円、輸送トン数は平均九・七屯であるのに対し、被害車両は一〇・八九屯というように、大型トレーラー車である被害車両の営業収入・輸送トン数がいずれも原告会社の運行車の平均より優れているのに、これを平均値まで下げることができていないことは、いうまでもない。)、また、利益率についても、特段の反証のない本件では、一般路線営業用貨物自動車の利益率をもとに算定されるべきものと考えられるから、これを前提にして前記認定事実により被害車両の休車損(但し、原告は三三日のみの休車損害を主張するにすぎないから、右の三三日についての休車損を算出する。)を算定すれば、合計一七三万七、三三五円(円未満切捨て)となる。

計算式

15万4,570円(事故前3か月の1日当たり営業収入)×0.3406(利益率)×33日=173万7,335円

第四過失相殺

成立に争いのない甲第三ないし第一一号証、証人佐々木省二の証言、被告大森本人尋問の結果を総合すると、訴外佐々木は、降雨のため路面がぬれていて車輪が滑走しやすい状態となつていた名神高速道路上り線四五五キロポスト付近道路を被害車両(積載荷物約一三屯)を運転して時速約九〇キロメートルで走行車線を進行中、加害車両が追越車線を時速約九三ないし九五キロメートルで追い抜いたことから、追越車線に進路変更して加害車両に追従していたところ、約九〇メートル先を先行する加害車両が左にウインカーを出し走行車線へ車線変更しようと急激に左へ転把し、フツトブレーキを使用したため左へゆれ、次に進行角度が左斜めにきつく感じたため右にハンドルを切つたために右へゆれているのを現認し、危険の発生を予知して後続車にも危険を報らせるためにポンピングするとともに時速約六〇キロメートルに減速して追従中、加害車が更に左へゆれるのを認めてこれとの衝突を避けるべく追越車線から左へハンドルを切り走行車線に進行しようとした際、加害車両は助手席を下に向け横転し、続いて加害車後部ボデーアルミ板が路面に落下し、加害車両に積載していたドラム缶が路肩及び走行車線に散乱し、加害車両は横転したまま滑走して追越車線と走行車線をまたぐように塞いで停止したため、これとの衝突を避けるべく更に左へハンドルを切り、左側に設置されていたガードレールに被害車両左側面部を接触させてブレーキの役目をはたさせたことから、転倒停止していた加害車両の手前約一五メートルのガードレール支柱に支えられて停止したことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

右によれば、訴外佐々木は、当時、降雨のため路面がぬれていて車線が滑走しやすい状態であつたことを考慮すると、運転操作を誤つて横転した加害車両との衝突を避けるため、急ブレーキの操作にたよることなく、ガードレールに車体を接触衝突させて停止させる措置をとつたということが認められるのであるから、訴外佐々木の運転にかかる被害車両の損傷による原告の損失は、加害車両が横転しなければ発生しなかつたものであつて、被告大森の過失と原告の損害との間に因果関係が認められるうえ、右の如き停止措置をとつた訴外佐々木に何ら責に帰すべき事由はみられない。従つて、被害車両の事故は訴外佐々木の一方的過失により発生したものであつて、かつ、加害車両の横転と原告の損害との間に因果関係がないとする被告らの主張は採用しない。しかしながら、右認定事実によれば、訴外佐々木は、追い抜いて行つた加害車両に追従して走行するに際し、当時、降雨のため路面がぬれていて車輪が滑走しやすい状態であつたのであるから、先行する加害車が急停止の措置を採る場合等の危険を考慮し、十分な車間距離を保持してこれに追従しなければならない注意義務があるのに、これを怠り、時速約九〇キロメートルの高速度で走行していながら車間距離を約九〇メートルあけた状態で加害車両に追従した過失により、被害車両左ボデーを左側ガードレールに衝突させる方法で停車させざるを得なかつたものと認められ、前記認定の被告大森の過失の態様等諸般の事情を考慮すると、訴外大森の使用者であつて被害車両の保有者である原告の損害につき、訴外大森の過失を被害者側の過失として、その損害額の一割を控除するのが相当と認められる。

そうすると、原告が被告らに請求しうる金員は、損害額五七八万〇、二九三円の九割に相当する五二〇万二、二六三円(円未満切捨て)となる。

第六弁護士費用

本件事案の内容、審理経過、認容額等に照すと、原告が被告らに対して本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は五二万円とするのが相当であると認められる。

第七結論

よつて被告らは各自、原告に対し、五七二万二、二六三円、およびこれに対する本件不法行為の日である昭和五八年一〇月一三日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金をそれぞれ支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂井良和)

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